酔頭禿筆日記 sioux_pu’s diary

現像ソフトも編集ソフトもない撮ってだしです。というのもどうかな、と最近思っています。

工藤幸雄

おとといくらいから(くらいって、そんな最近のこともはっきりしないのか?)『カティンの森』/集英社文庫 を読みだした。昨年末、映画が話題になっているのをTwitterで知り、名古屋での上映はまだ先とのことから原作を先に読んでみようと。
映画評などをみると、映画版と文庫版の内容はわりと違うようなので、成立過程などの資料がないかと検索していたところ、翻訳者のひとり、工藤幸雄のブログにたどり着いた。
文庫版『カティンの森』の共訳者久山宏一の解説にもあるが、工藤氏が映画版の試写を見たのが07年12月3日、文庫版の翻訳に着手するのが同12月末、訳了は08年3月7日。工藤氏はこの直後3月12日に肺癌のため入院、同年7月5日逝去された。
工藤氏のブログは、2007年9月から2008年3月までのおよそ半年しか残されていない。愛機はMacだったようで、マシンがクラッシュして困った話があったり、同じ記事が何度もアップされていたりもする。だが、なんといえばいいのだろう、「チャーミング」といえばいいのか、ほのかに高揚させられる文章が綴られている。
詩を愛していた、というより、詩人だったのだろう。いく点か掲載されている訳詩のうち、一つを転載(著作権的にはOKなんだろうか?ダメなら削除します)。

手帳 Antoni Slonimski アントニ・スウォニムスキ(1895〜1976)


昔の手帳をめくると
つぎつぎに電話の番号
友人のだれも生きてない
どのアドレスも焼けた
ダイヤルを回す。 待つ
呼び出し音が鳴る
だれかが電話を取る
静かだ。息が聞こえてる
ひょっとしたら炎の囁きなのか