酔頭禿筆日記 sioux_pu’s diary

現像ソフトも編集ソフトもない撮ってだしです。というのもどうかな、と最近思っています。

本にあたったはなし

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RE Auto-Topcor 1:1.8 f=5.8cm α7

REオートトプコールはいいよ。f1.8のほうなら安いし。

 先日6月6日といえば当然6×6の日で、たまたまマンションの配水管点検立ち合いの日でもあったので有給休暇を取得したのだった。

 点検も無事終わってどのカメラを持ち出そうかと考えようとしたのだけれど、まったく考えが纏まらない。それどころか、「わざわざ金かけてクソ写真を量産してもしょうがねぇだろ」という謎のネガティブ思考まっとうな意見が湧いてくる。

 おまけに翌日会社を休む口実ばかり考えている。ひょっとしてメンタルダメなシーズンが始まったかも、などと思い、外出はあきらめて部屋で過ごすことにした。

 ヘニング・マンケルの『イタリアンシューズ』に、社会になじめない移民の子どもたちを預かる女性が登場していた。先月はそのへんつながりで同じスウェーデンのミステリ『地下道の少女』(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム ハヤカワミステリ文庫)を読んだ。地下道の子どもといえば、ブカレストの「チャウシェスクの子供たち」を連想するが、舞台はストックホルムだし、と思いきや「チャウシェスクの子供たち」も主要な事件二つのうちのひとつの被害者として登場する。

 内容は、福祉国家スウェーデンには存在しないとされている地下道に居住するホームレスを扱ったもので、現在を描く章と、事件発生時点である53時間前から時間を追って捜査を描く章が交互に置かれ、ほぼほぼ一気に読まされたのだけれど、

(以下若干ネタバレ)

作品の最後にはかなりのどんでん返しが用意されており、しかも作中の事件には一切解決が与えられず、登場人物たちの苦悩だけが読者に残され、それでも作品は完全に完結しているという「何を言っているのか わからねーと思うが」控えめに言って傑作だった。ただ、まったく救いのない作であるぶん、精神にまあまあダメージが残っているということにこのとき気付けばよかったのだが。

 並行して読んでいたのが『どこに転がっていくの、林檎ちゃん』(レオ・ペルッツ ちくま文庫)。ペルッツは最初に読んだのが『ボリバル侯爵』なので、シュールリアリスムとか幻想小説的な印象を持っていたのだが、こちらはロシア内戦下での追跡劇で、ロシア内戦はネットを漁ってもあまり詳しい記事が見つからないのでその面から読んでも面白かった。その辺の感想はまたべつに書いてみたいけれどもさていかに。結末の主人公ヴィトーリンのこころには安息があるので、救いがあるといえばある作品なのだが、読者に残るのは安息よりも切なさだろう。そういや『アンチクリストの誕生』ではチェーカーと表記されていたのに、こちらではチェカと変更されているのはなぜか。うちにはインダスター22とオリオン15とジュピター12があるがFEDはない。

 追跡劇つながりで、いま続けて読んでいるのが『カチアートを追跡して』(ティム・オブライエン 新潮文庫)。品切れなのか絶版なのか不明だが、密林のマケプレでたまたま1,000円で出ていたので入手。

 これはやめとけばよかった。20年ほど前にティム・オブライエンをまとめて読んだとき、この作がいちばん面白かった記憶があったのだけれど、30代と50代終わりでは精神の強度がちがうのだった。いくらファンタジー味があるといっても、上記2作を読んだところに、ベトナム戦争を舞台にした作を読むんじゃなかった。

 

 ひどい時期だった。八月の初めにはベン・ナイストロムがいきなりひざを折って泣き出し始めた。いっこうに泣き止まなかった。径の上に殆ど仰向きになってしまい、首を振って泣いていた。全身から力が抜けているようだった。ドクが手を貸してようやく立ち上がらせたものの、泣き声は止まなかった。

 その後、ますます殺気を孕むようになってきた午後のバスケットボールの後で、スティンク・ハリスとバーニー・リンが本気の喧嘩を始めた。 (179ページ) 

  このあとの喧嘩の描写がひどくて、気の弱いおじいちゃんには刺激が強すぎたのね。

 

 そんなわけで、おなかが食べ物にあたるように、気持ちが本にあたったようになっていた。

 きのう7日は6×7の日だったけれども、67のカメラは持っていないのでカメラではなく川上弘美先生(年長者は先生)の『ゆっくりさよならをとなえる』を持って出勤し、帰宅の地下鉄でリハビリをした。おなじ車両にどうもコンサート帰りらしい2人組のお姉さまが大きな声でたいへん楽しそうに話をされておられた。とんかつ屋さんの話題が出ていたが、店の名前は失念。やや回復感あり。

 スーパーでそら豆の塩ゆでと、キムチ鍋にしようと加熱用のむきホタテ、それから金宮25度に割り用のトマトジュースを買って帰った。

 とうぜん今日は二日酔いで頭が痛いけれども、洗濯をしながら堀江敏之(年下は呼び捨て)さんの『一階でも二階でもない夜』をつまみ読みしたりしたのでした。

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SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 α7

SWHはVer.1です。