酔頭禿筆日記 sioux_pu’s diary

現像ソフトも編集ソフトもない撮ってだしです。というのもどうかな、と最近思っています。

『母の日に死んだ』 ネレ・ノイハウス

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 11月5日に2回目の新型コロナウイルスワクチンの接種を受けて、翌6日は朝から38.5度の発熱と頭痛・筋肉痛になってしまった。「円頓寺本のさんぽみち」に行きたかったりもしたのだが、いろいろ諦めて家で寝ていることにして、ネレ・ノイハウスの<刑事オリヴァ―&ピア>シリーズ第9作、『母の日に死んだ』を読んだ。

 

 

 このタイトルはどうなんでしょうね、初見の人の購買意欲を喚起するものではないと思うのだけれど。前作のタイトルは『森の中に埋めた』だったし、この方向で行くのかな。 

 警察小説ということで、毎作捜査側の登場人物もそれなりに多くてもめ事もあったりするのだが、今作では刑事同士の軋轢はあまり書かれていない。また、何かと問題のあった主役のピア・ザンダーとオリヴァ―・フォン・ボーデンシュタインの家庭は安定している。ピアの妹で司法精神科医のキムが、事情があって背景に下がり終盤までほとんど出て来ない。

 その代わりに元FBIのプロファイラー、デーヴィッド・ハーディングが登場する。ハーディングが事件の捜査に重要な役割を果たすのだが、このキャラクターづくりが何とも奇妙だ。登場する場面では「茶色のスーツは古典的な三つぞろいで、シャツはカナリアイエロー。そしてこれほど醜いネクタイをオリヴァーは見たことがなかった。」とか「ハーディングはいつもの茶色の三つぞろいを着ていたが、シャツはオレンジ色のものに替え、茶色とオレンジ色のストライプ柄という悪趣味なネクタイを結んでいた。」

「意味が分からん」(内野家康)。ひょっとしてZDFのドラマを盛り上げるために変なキャラクターを作っているんじゃなかろうかと勘ぐってしまう、そういえばオリヴァーもかっこよくなって黒のポルシェカレラ4GTSカブリオレに乗っているし、主役二人+変なアメリカ人という場面。いや、これはどうでもいいはなしです。

 ハーディングは捜査にあたってサイコパスについて解説する。

「成功したサイコパスも存在する。外科医、俳優、警官、弁護士、あるいは指導的立場の人間によくみられるものだ。そういう人間は、他の人間だったら気が動転してしまうような危機的状況でも、沈着冷静に対処できる。」(284ページ)

「最後に銘記してもらいたい。シリアルキラー精神科医をもってしても治癒することのできない病人だ。サイコパスを止められるのは、より大きな力を持つサイコパスだけだ」(509ページ)

 このへん、ひょっとして自作以降のヒントがあるのでは、などと思ったのでした。ハーディングは今後も登場しそうではあるけれども、ギャラが高いらしいのでホーフハイム刑事警察署の限られた予算では少々難しいだろうか。